株式会社 伊藤陸川設計室
  代表取締役 伊藤宏司氏/陸川 衛氏

伊藤陸川設計室 伊藤宏司氏

伊藤陸川設計室 陸川衛氏

伊藤氏・陸川氏のプロフィール

株式会社伊藤陸川設計室
代表取締役

伊藤氏:関東学院大学工学部建築学科卒業後、建築事務所勤務後、関東学院修士課程に入学。渡辺武信設計室を経て株式会社伊藤陸川設計室を設立。
東京造形大学環境コース講師、オフィス環境研究所研究員、日本建築教会関東甲信越支部常任幹事、日本建築家教会関東甲信越支部住宅部会上なども経験。
1980年より現在まで関東学院大学工学部建築学科講師を勤めている。

陸川氏:関東学院大学工学部建築学科卒業後、(株)建築企画に入所。
1975年に一級建築士資格を取得後、1977年に伊藤氏と共同で陸川設計室を設立。

一級建築士(建設大臣登録第94748号)
一級建築士事務所登録 東京都知事登録第16423号

会社所在地
東京都渋谷区神宮前6-33-11
グレース79 102
TEL:03-3409-3411

三峰での主な実績
西早稲田E邸
伊勢佐木町マンション

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原宿に事務所を構える、伊藤陸川設計事務所へお伺いして、伊藤宏司先生、陸川衛先生にお話を伺いました。

お二人で事務所を開いてから 30年、渋谷区内で設計事務所を共同主宰していらっしゃいます。

独立開業されたきっかけは、お二人で「住宅」を作りたかったから。

現在では都市計画・地域開発、ランドスケープ、内装設計なども手がけるようになり、「大きな仕事」をするようになったところで、また「住宅」も手がけたいという想いが出てきたそうです。

両先生とも重ねてきた年輪を感じさせる穏やかな話し方で、家を建てることに対する深い愛情を感じました。

 


--本日はお忙しい中、お時間を頂きありがとうございます。
早速ですが、建築に関する思いなどをお聞かせいただければと思います。

伊藤:建築に対する「思い」とか、初心に返ってみるとなんだか恥ずかしいですが、僕は「生活を楽しむ」ということを重視しています。

今の機能性住宅も良いですが、それよりもオーナーさんのライフスタイルがより良くなるようなそんな家を造りたい。ライフスタイルにこだわりのあるオーナーさんに来て欲しいと思います。

--現在はビル等の大きな建築物が中心とお聞きしましたが。

伊藤:最初の20年くらいは個人の住宅ばかりだったんですよ。段々扱える規模が大きくなってきて、色んなことを経験してきましたけれど、このあたりでまた住宅に戻りたいなと思うようになったんですね。

--その中でもやはりこだわりのある家の設計をしたいということですね。

伊藤:そうですね。例えば、湘南の海のすぐ近くに家を建てる人なら週末は間違いなく「海」、次に「仲間」。

サーフィンを楽しんだ後、みんなでバーベキューができるような家がいいのであれば、それなりの設計プランというのがありますよね。
家に入る前にシャワーが使えたり、サーフボードの置き場があったり、または砂がついたまま出入りしても良いスペースを作るとか。
そうなれば導線も普通の住宅とは違ったものが必要でしょう。

車やバイクが好きなら、居間から愛車を眺められるようにするとか、もっと好きな人は居室の中にバイク置き場を作るとか。

--建売りやマンションでは実現できないストレスフリーな家作りですね?

陸川:そうですね。「暮らしをデザインする」というのが僕たちの仕事なわけです。
僕たちの役割は家を建てたいオーナーさんにいかに力を貸してあげられるかだと思います。

本当はそれくらいの力しかないわけですが、やはりプロですからできる限りオーナーさんの生活スタイルや性格を把握して、より住みやすい家にすることが目的です。

住宅にも流行はあるけれど形や機能を追いかけるのではなく、もっと根本のところで生活を楽しめるような仕掛けをすることが仕事だと思っています。

--これまで手がけた中で思い出深いエピソードは何かありますか?

陸川:それぞれオーナーさんの個性があって皆さん思い出深いのですが、エピソードのあるものというと一番最初の物件ですね。

伊藤:僕がイメージイラストを書いて、陸川が設計したんです。それをとても気に入っていただけて。

陸川:結局、お子さんが独立したり、家族構成が変わったりするたびに改築を頼まれましてね。「この家を一番良く知っているのはあなたたちだから」って。
家族とともに成長していった家といっても良いですね。

伊藤:嬉しかったのはお子さんが成人した後に「子供がまっすぐ育ったのはこの家のおかげだ」って言っていただけたことですね。

--家の構造的に、家族のコミュニケーションを重視した作りだったんですか?

伊藤:いや、確かにかなり変化に富んだ家なんですが、そういうわけではないですね。でもお子さんがその家を大好きで、誇りに思っているといった事を言われました。

陸川:あれは嬉しかったですよ。

-- 家を誇りに思うって素晴らしいことですよね。かなり注力されたんですか?

陸川:まだ他にお客さんいなかったからね (笑)

伊藤:そう、本当にかかりきりで。とことんオーナーさんとお付き合いして予算も厳しい中でできる限りのものを作らせてもらいました。

陸川:数十年にわたってお付き合いのできる、人生の中でもすばらしい関係を築けたと思っています。

--他には何かありますか?

伊藤:完全にデザイン優先の面白いのがありますよ。ある映画のワンシーンを作って欲しいと言われて、この年代の、この場所の、こんな雰囲気で。と指定されましてね。
新築ではその雰囲気は出ないので、古い建物を探して、壊して、新しく作らないといけない。だから物件から探して完成まで3年かかりました。

これは面白かった。映画を見に行ったり、フィルムセンターまで足を運んだり。最終的にはイメージを実現しないと意味がないわけだから必死でしたよ。

-- ニュアンスのある家というのは素敵ですよね。個人の住宅だけではなく、店舗などにも生かされる経験ですね。
ちょっと話はそれますが、30年前の原宿はどんな場所だったんでしょうか?

陸川:なんにも無かった (笑)

伊藤:喫茶店なんか3件しかなかったよね。
この辺はお屋敷町だったから、区画がひろくて空が抜けていてね。
そういう雰囲気はいいよね。町としてみるならそういう場所が豊かな町だと思う。

陸川:表参道から骨董通りの裏道あたりがまだ面影があるけれど、あんな感じのところが町としていいよね。

--お二人の役割分担というのはやはりあるんですか?

伊藤:僕はイメージを膨らませたり考えたりするのが大好きで、極端なことを言えば技術的なこととかはあまり興味ない。

陸川:規制や法律やややこしい事をクリアしてその想像を現実にするのが僕の役割といった感じですね。

--なるほど、お互いがプラスに作用してよいものを作りつづけていらっしゃったんですね。それでは最後にこれからの家づくりに対して何かありますか?

伊藤:今は工法から始まって家としての機能とか、最新設備とか、色々と情報があふれているのでオーナーさんもよく勉強していらっしゃる。
そういうものも大切だけれど情報に振り回されず、オーナーさん自身の感性を大切にしていただきたいと思います。

陸川:せっかく家を建てるのだから、楽しく暮らせる家を建てて欲しい。そして長く愛し、住みつづけられる家を一緒に作らせて欲しいと思います。

--たくさんの経験を重ねていらっしゃった両先生の熱い想いが、素敵な家や街をつくっているのですね。これからも三峰にお力添えください。

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