一級建築士事務所 エスティエイアール
  代表取締役 佐竹永太郎氏

有限会社エスティエイアール 代表取締役 佐竹永太郎氏

佐竹氏のプロフィール

一級建築士事務所
有限会社エスティエイアール
代表取締役

東北大学大学院建築学科卒業後、北川原温建築都市研究所を経て、竹下昌臣氏との共同主宰によるエスティエイアールを設立。
2005年法人化に伴い、エスティエイアール代表取締役就任。

日本のみでなく、中国・韓国などへ舞台を広げ、建築、インテリア、ランドスケープ 等ジャンルを超えたユニークな活動が注目される。

一級建築士(国土交通大臣登録第297112号)
所属
JIA 日本建築学会
AIJ 日本建築家協会
日本建築士連合会

主要受賞歴(国内)
2007年
仙台市高速鉄道東西線広瀬川橋りょう他設計競技[特別賞]
2005年
JCDデザイン賞2005[入選]
2003年
長浜・かねぼう町まちづくり集会所設計競技[審査員奨励賞]
1995年
仙台ショーウィンドーコンテスト[最優秀賞]
仙台メディアテーク公開設計競技[佳作]
1993年 大河原公園及び周辺施設公開設計競技[特別奨励賞]

会社所在地
東京都北区東十条2-4-7
TEL:03-3914-8404
http://www.starchitects.info

三峰での主な実績
本牧原Y邸
横浜山手M邸
元麻布PROJECT
浜松町PROJECT
金沢区N邸&PROJECT(進行中)

PHOTO STAR OFFICE
STAR MEETING


東十条の駅からすぐそばにある有限会社エスティエイアール社にて、佐竹先生に インタビューさせていただきました。

同社の外観は江戸時代の建物のような和風の建物、くぐり戸を抜けると閂のついた門でした。
内部はクラシック・モダンともいえる不思議な空間が広がっています。

建物の奥にはテラス、その向こうにある庭では小鳥が遊び、室内には沢山の模型。
平均年齢も若い会社ですが、張り詰めた雰囲気と、整然とした心地よさを感じます。
 

佐竹先生はクールな中に静かな情熱を秘めていて、ゆっくりと穏やかな口調で設計デザインについての想いを語ってくださいました。


--まず最初にエスティエイアールさんで行う仕事の分野というのを教えてください。

佐竹:さまざまなことに挑戦しています。住宅からホテル、百貨店、レストラン、変わったところでは水族館のリノベーションとか、橋やランドスケープの設計まで。

--橋、ですか?

佐竹:それは仙台市に開通が予定されている地下鉄のコンペに出したものですね。模型を見ていただけると分かるのですが、川の上にかかる鉄道橋なんです。
景観としての橋ということがもとめられていましたので、公園計画と一体となるデザインとしました。
また、橋として外から見た姿が美しいだけでなく、乗ってる人が楽しめるような配慮をしました。
列車に乗ったときに見える風景を想定したムービーの製作もおこないました。

--本当に幅が広いと思うんですが、得意な分野というと?

佐竹:異なる分野のアイデアを取り入れてデザインすることが得意でしょうか。
ホテルのような部屋に住みたい人にはホテルのノウハウを提供しますし、くつろげる空間がほしい店舗には個人の家のノウハウを活用したりします。
百貨店のレストラン街なら、本当にひとつの街と感じられるように仕掛けつつ、各店舗の個性を生かせるようなデザインを考えます。
商業デザインの場合は、最終的にはお店にお客さんが来てくれて繁盛してくれてこそ成功なので、ただ綺麗につくれば良いというわけではないのが面白いですよ。

--ウェブを拝見したところ、キューブ系の住宅が多く掲載されていたのですが、キューブ系は得意でいらっしゃるのでしょうか?

佐竹:結果的にキューブの形がもっとも適しているものがこれまで多かったということでしょうか。検討段階では、さまざまな形のスタディをしています。
インテリアに重点をおいた設計が多かったこともあり、インテリアにコストを掛けたいということもありました。
また、建物の佇まいを周辺との関係で解いていった結果、キューブ がふさわしいと判断するケースもあります。

元麻布PROJECT--エスティエイアールさんの作る模型は、毎回、建築プランそのものにプラスしてかなり広い範囲の周辺の建物も作っていただいているのですが、なぜですか?

佐竹:家でもビルでも、その1軒だけがそこにあるわけじゃないから。
カタログ的な美しいパースを書いたところで、周りとの調和が取れない建物はトー タルとして失敗だと僕は思っています。
調和というのは、単に目立たないというわけ ではなくて、建物の目的、周辺環境、社会情勢、そうした総合的な判断に基づく調和 であり、時に目立つことも含まれます。短絡的な思考・結論を出したくない。

--それはなぜですか?

佐竹:やはり主役は家ではなく「人」だから、周りとの関連性を無視するのではなくなるべく溶け込みつつ、主張する。その主張の部分こそがデザインですよね。
例えばホテルだとひとつひとつの部屋はそれぞれの家、その真中に通路があって人が行き来する道路と考えます。部屋は単独の存在だけれど、単体で成り立っているわけではなく、あくまでも周りがあってひとつの部屋がある。その中で一部屋だけ奇抜な色のドアっていうことは普通ありえないですよね?

--そうですね、全体の景観やバランスは重要ですよね。

佐竹:意図して真逆のことをするのも良いですけれど、その際はとても慎重になるべきです。 僕らがつくる建築は社会資本や景観としての公共性も求められることも意識しなければならない。多くの関係性の中で、ふさわしく美しい関係性を生み出していくのがぼくたち建築家の使命であり、社会性であるとおもいます。

--ところで、上海にも事務所をお持ちなのですか?

佐竹:上海で仕事を行ったときに知り合った台湾人のパートナーと現在も連絡を密に取り合って、パートナーシップを結んでいます。
中国のプロジェクトを協同でデザインしたり、日本の雑誌へ紹介したりとか。上海事務所というより現地のパートナーと いったところでしょうか。そんな感じです。

--上海でのお仕事は楽しかったですか?

佐竹:楽しかったといえば楽しかったですね。独立して最初の仕事で、約3ヶ月現地にいましたが、設計とか建築とか言ってもやはり日本とは感性も流儀も違います。
説明しても通じないことも多いので、金具ひとつから調達して取付け方を教えたり、石市場にいって石を選んでその場で加工を指示したりしました。
また、銀粉入り墨漆喰の壁をつくりたかったのですが、壁に塗る塗料に銀粉を混ぜて・・・と説明しても、塗ったことがないからといわれて僕が左官の仕事もやってみせました。 言葉もできないのによくやったなぁと。

--設計士、建築家というよりも現場監督かそれ以上ですね。
ところで2002年にこの事務所を設立されて、わずか5年で急成長されていますが、心がけていらっしゃることはなんですか?

佐竹:僕は何でも3年スパンで物事を考えているんです。小学校も中学校も3年スパンですよね。今は2回目のスパンの中盤くらいですが、3回目に向けて常に新しいものを作ることを心がけている。
同じ物を作ることは簡単で、スピーディーだけれども、設計料を受取る以上それはお客様に失礼だと思いますし、僕としてもそういう仕事はしたくないんです。
お客様にハッピィになってほしい。そのスタンスとデザインを評価していただいてここまで来れたと思っています。

--このお仕事をしていて楽しみって何でしょう?

佐竹:全ての責任を自分で持てること。万が一、失敗しても自分自身というところですね。それと、イメージを膨らませることは楽しいですよ。

--設計デザイナーを目指そうと思ったきっかけというのは?

佐竹:3つあるんですが、子供のときに移築された古民家を見て感動したんですよ。家具やいろんな道具も見たこと無いものばかりで、面白くて。
その次は中学生のときに親が家を建てたんです。
その時にガレージの壁に名前を入れるというのを提案したら、そのとおりに出来てきて。おもしろいなーと感動して。 最後は、毎日通学するときに代々木体育館の屋根を電車の中から見ていて、こういうのをやりたいなぁと。

--幼い頃から道は決まっていたという感じですね。

佐竹:そうですね、特に代々木体育館の屋根みたいなものはやりたいんですが、現実的な制約が結構大きくて、イマジネーションとの狭間でいつも悩みますね。

--では、今後、どのようなものを作りたいと思いますか?

佐竹:美術館!規模の大きなものをプロデュースしたいのはもちろんだけれど、そこに飾る作品を思い浮かべながら、作品と響きあう空間を丁寧に作ってみたいですね。

--街とか景観でお好きなところはありますか?

佐竹:不思議なことに「この街」というのはないですね。
渓流が好き、とかピンポイントで「冬の京都の朝のピンと張り詰めた中になかに新しいことが始まる予感を秘めた空気感」とか。
静かで美しい緊張感みたいなものが好きですね。
でも一番好きなのは自然の山とかかな。飛行機から陸地を見ていて思ったんですが、上から見ると家が建っている場所ってごく一部でしょ? 山があってそのふもとに家が連なっている。その中で人間が喧嘩したり、泣いたり笑ったり、争ったりして生きているけれど小さな存在だと思うんです。
山を見ると安心するのは、安定した大きさとか厳しさとか、その中に内包されている穏やかさとか、多分、そういうものが好きなんでしょうね。

--佐竹先生の豊かな感性が、たくさんのお仕事にもいかされているんですね。これからも三峰と共にどうぞよろしくお願いいたします。

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